木造軸組工法のポイント

 

木造軸組工法を簡単に言えば、基礎の上に土台を乗せ、土台のヒに柱を建て、柱と柱を梁でつなぎ、その軸のヒに小屋をのせて屋根を葺く工法です。誌面が限られているので、そのチェックポイントを最大限に絞り込んで言えば、前記の法令集の『建築基準法施行令第3章・第36条?第49条』を熟読していただきたいということに尽きます。とくに第40条・第49条には木造に関する事柄が書かれています。建築基準法や同施行令は建築の”最低限の基準”を定めたものですが、この最低限の条項にかなっていればまず大丈夫。これらをチェックするだけで安心といってよいでしょう。木造軸組住宅で最も多いトラブルを挙げると、

 

柱が細い
木部(柱・梁)が割れている
コンクリート基礎に亀裂が入っている
筋違が少なく、建物が揺れる
床がたわむ
雨漏りする

 

などです。これらのトラブルの要因は、時には複雑で簡単にわからない暘合もありますが、まずは建築基準法施行令どおりに施工していれば回避できるものが多いのです。重ねて言いますが、「建築基準法や同施行令の基準は、最低限の技術基準である」ということ。したがって、その基準よりも下回っているのは「法的には許されない」ということを念頭において、チェックしてください。なお、ここで大丈夫というのは技術的なことに対してであり、経済的な側面については法律は全く触れていません。それについては契約書でチェックする以外にありません。

 

 

乾燥した構造材を使っているか?

軸組の木造

 

床の堅さを決めるのは、床を支える梁などの構造材の大きさと間隔、床の下地に張る構造用合板の厚さ、そしてそれぞれの接合方法です。太い構造材を狭い間隔で何本も渡して、その上に分厚い構造用合板をしっかり打ち付けてあれば、床はそれだけ堅くなります。かつては床下の隅に火打ちと呼ばれる部材を設置していました。隅を頂点に三角形をつくるように部材を固定するのです。しかし今では、この火打ちでは床の堅さを確保するのに不十分と考えられています。細かな仕様はともかく、今では一定の厚さ以上の構造用合板を床の下地として張り付けるのが常識です。次に構造材の強度と含水率です。「良い素材」という観点から少し解説を加えました。耐震性という観点からはどのようなことを指摘できるのでしょうか。

 

構造材である以上、一本一本に一定程度の強度が求められることは耐震性の観点からも言うまでもありません。ヤング係数というような強度を示す指標をもとに、すべての構造材を検査していれば、まず間違いはないでしょう。含水率は、乾燥によって一定程度に抑える必要があります。それは乾燥が十分でないと、木材に割れや狂いが生じたり、腐朽菌やシロアリの被害を受けやすくなったりするからです。構造材にとって好ましくないこれらの現象は、耐震性の観点からどのように評価されるのでしょうか。割れや狂いが生じると、元の強度を保てなかったり寸法が変化することで接合部にすき間が生じたりします。つまり、構造体としての強度が下がります。腐朽菌やシロアリの被害を受けると、非常にもろくなって構造材としての強度が損なわれます。木造住宅に多くの被害をもたらした阪神・淡路大震災では、古い住宅での損傷・倒壊が目立ちました。建築年代が古く法律上の耐震基準に追い付いていなかったという事情もあるかとは思いますが、実際の被害を見ると、構造材の根元が腐ったりシロアリに食われたりしていたものもあることから、それらも大きな被害を受けた一因と考えられます。いずれにしても、構造材の含水率と耐震性とは決して無縁ではありません。強度と含水率のしっかり管理された構造材は、耐震性の観点からも重要です。

 

 

接合部で変わる木造の強度

軸組の接合部

 

最後に接合部の信頼性です。ここで信頼性というのは、異なる部材のつなぎ目で、一方の部材と他方の部材との間の力の伝達を問題なくできるかということを意味しています。接合部がその役割をきちんと果たしているかという点が問われるわけです。

 

役割が不十分であることから、地震時に被害を受ける例はよく見られます。例えば地震の揺れによって部材に大きな力が加わると、その引き抜きという被害が起きます。建物が倒れようとする大きな力に抵抗できず、柱が土台から抜けてしまうのはその一例です。ホールダウン金物と呼ばれる補強金物は、そうした柱の引き抜きを防ぐためのものです。基礎から立ち上がるボルトを、土台越しに柱に固定します。ボルトの一方は基礎コンクリートの中に埋め込まれているだけに、ボルトの他方を固定する柱に大きな引き抜き力が働いても、しっかり抵抗できるという造りです。最近は、こうした補強金物以外にも、接合部の信頼性を高める狙いでさまざまな金物が用いられるようになってきました。断面欠損という接合部の強度にかかわる問題がクローズアップされるようになってきたからです。かつては異なる部材同士の接合部を複雑な形状に加工し、それらを組み合わせる、木組みによって固定していました。ところが、部材に加工を施した分、その断面は当然、小さくなり、構造材としての強度は落ちてしまいます。断面欠損とは、こうした断面上の部材の欠けがもたらす強度上のマイナスを意味します。

 

木造住宅の金物工法はこうしたマイナスを補おうと登場してきたものです。金物を併用することで部材の断面欠損が小さくなるような工夫が施されています。市場ではさまざまなメーカーからさまざまな金物が提案されています。中には、断面欠損を恐れるあまり、接合部に作用する力をほとんど金物だけで持たせている工法があります。部材はほとんど加工しない代わりに、部材に取り付けた金物の組み合わせだけで接合部を構成する造りです。金物工法としては比較的知られていますが、この工法は火災に弱いという欠点を持っています。火災時には熱を受けた金物が耐力を失うため、接合部が破断し、部材の崩落を引き起こす恐れが考えられます。望ましいのは、昔ながらの接合部の造りに金物を組み合わせたハイブリッド型ではないかと思います。断面欠損はできるだけ小さくするようにしながらも、火災時に金物の耐力低下が起こるであろうことを見越し、それへの備えも併せ持った造りです。

 

※鉄骨住宅の外壁材比較

※家づくりの基礎知識

 

 

木材は強度の管理が重要

さまざまな場所に用いる木材の中で最も重要なのは、建物の構造体をつくり上げる構造材という部材です。この構造材に用いる素材に難があれば、時間とともに腐れが生じたりシロアリの被害を受けたりするなどして、設計時に想定した強度を発揮できません。地震時には被害を受けることにもなりかねません。では、何か構造材の良し悪しを決めるのでしょうか。これは木材の構成を見ると、おのずと理解できます。丸太の断面を思い浮かべてみてください。赤みがかっている中心部の周りには白っぽい部分が見られます。この赤みがかった部分を俗にアカミ、白っぽい部分を俗にシラタと呼びます。この2つは同じ木材でも特徴が異なります。アカミは耐久性に優れています。腐朽菌による腐れやシロアリによる虫害に対して強いといわれます。これに対してシラタは、強度に優れています。程度の差こそあれ、木材は耐久性と強度を併せ持っているわけです。つまり良い素材とは、耐久性が高く、強度に優れる木材といえます。切ったり削ったりすることを前提にしていますから、一定程度の加工しやすさも欠かせません。

 

このような観点から一般に構造材に用いられる木材は、針のように細長い葉を付ける針葉樹です。国産材で代表的なものはスギです。一口に構造材といっても柱や梁や土台などのさまざまな部位に分かれる中で、スギはほかの樹種と違っておおむねどの部位にも適した木材といわれています。ただ、スギに限らず木材は、自然界の産物です。工業製品とは違って、その材質は一本一本異なるものです。それを構造材として用いるには、想定通りの強度をいつまでも発揮できるように、人の手で管理する必要があります。一つは、強度の管理です。とりわけスギは強度のばらつきが大きい木材なので、これは不可欠の工程です。強度の管理には、ヤング係数という木材のたわみやすさを示す指標を用います。これは、角材を水平に渡してその上に荷重を掛けたとき、下方向にどの程度たわむか、という見方に立ったものです。曲げ強度の強さを示す指標ともいえます。このヤング係数をすべての木材で測定し、設定した基準値に満たない曲げ強度の低めのものを除外していけばいいのです。そうすれば、強度のばらつきを一定程度に抑えることが可能です。

 

もちろん、強度不足で除外された木材はムダにしません。構造材としては使えなくても、ほかの部位で使う分には問題ありません。別の用途として活用すればいいのです。もう一つ管理が必要なのは、木材の含水率という数値です。樹木は根から水を吸っていましたから、切り倒されて木材になってからも、水分を一定程度含んでいます。しかしそのままでは、腐ったりシロアリに食われたりすることで強度が下がったり、自然に乾燥していく過程で縮んだりゆがんだりしてしまいます。構造材としては、それは避けなければなりません。そこで、木材として使用する前に、人工乾燥します。目指す含水率は15%未満です。木材に含まれる水分を、その重さの15%未満まで乾燥によって減らしていきます。かつては倉庫に1年ほど寝かせておき、自然にゆっくり乾燥させたものでした。しかし今は、そこまで時間の余裕を持てません。高温の環境下で人工的に乾燥させるほかないのが実情です。

 

ただ、乾燥を急ぐあまり高温で乾燥させると、木材が本来持っている耐久性を損なうことになりかねません。高温乾燥のうえで薬剤によって耐久性を持たせるのが常ですが、薬剤の効果は数年も経てば薄れてしまいます。これは考え方として誤っています。むしろ少々時間は掛かっても、高温乾燥に比べれば30〜40度低い90度程度に段階的に落としていき乾燥させるべきです。乾燥させる温度を適切に管理すれば、本材が本来持っている耐久性は損なわれることはありません。いくらスギが良い素材であると言っても、良い素材とは何かという問いに対する何の考えもなしに使っていたのでは、強度や耐久性の点で支障が生じかねません。今の時代、良い素材には人の管理が欠かせないのです。

 

技術と意識のある職人が必要

職人の高度さとはどのようなことでしょうか。ここで想定しているのは、技術力と仕事に対するモチベーション、この2つの高度さです。この2つがそろってはじめて、職人は大きな力を発揮できるのではないでしょうか。モチベーションがいくら高くても、技術力が伴っていなければ、その意欲は空回りしてしまいます。反対に、どんなに高度な技術を備えていても、モチベーションが低ければ、その力は存分に発揮されないでしょう。技術力を高めるには、自らの切磋琢磨が欠かせません。その機会として、施工の標準化に向けた方策として紹介した講習会・勉強会が役立ちます。新しい製品や技術への対応も、こうした機会を通じて習得することが可能です。普通に考えれば、そうは言っても、そうした講習会・勉強会にどの程度参加できるのか、という疑問が生じます。場合によっては掛け持ちしているかもしれない現場に通うだけで手いっぱいではないかと思えるからです。

 

しかし、これまで解説してきたような標準化・合理化が進めば、生産性が上がっていくので、職人には時間の余裕が生まれるはずです。生産性の向上で浮いた時間を、講習会・勉強会への参加に充てることができるのです。技術力と並んで重要なモチベーションはやはり、自らの待遇によって維持されるもの、また高まっていくものです。率直にいえば、働きに見合う労賃が保証されないと、仕事に対する意欲はわいてこないのではないでしょうか。標準化・合理化を推し進めたビジネスモデルによって、工期からムダを省き、職人も効率的に働くことができるようになります。年間の仕事量により、住宅の建築工事を手掛ける職人としては厚遇といえる収入を得ることもできます。これにより、職人は間違いなく育っていきます。高度な技術を身に付け、高いモチベーションを保つことができるはずです。人は置かれた環境によって思いのほか伸びていくものです。良い素材と高度な職人、そして標準化と合理化を推し進めたビジネスモデルー。この3つがそろえば、いい家を安く建てることが可能です。注文住宅でありながら、低価格の定価で供給することができます。

 

木造住宅は「木材調書」を出してもらおう

上で述べたように見積書は中身(明細)が重要です。しかし多くの工事見積書を見て思うのは、明細が比較的しっかりしている場合でも、木工事だけは「。式」となっているケースが非常に多いということ。これでは後日の「トラブルの種」と契約したようなものです。「梁が細すぎるし、トコ柱がお粗末なので『少し良いモノに代えてください』と言ったら、代えてはくれたが追加工事として代金を請求されてしまった」、などは相談者の80%もが述べる苦情です。どこに問題があるかといえば「トコ柱に何を使うのか」「梁にはどんな断面=太さのモノで、どんな樹種のものを使うのか」を書いた契約をしないからです。「そんな細かいことが、どうして素人の私にわかりますか。もし書かれていても私にはわかりません」と開き直る相談者もいます。でも、それではダメなのです。高額な住宅という商品を建てようというには大雑把すぎるのです。 

 

それでは木造住宅造りの流れを説明しておきましよう。住宅業者は設計図書ができあがると、それを材木店に渡して見積りをとります。材木店から業者に提出された書類には、使用木材の一部始終が詳細に書かれ、予定金額も記人されています。本来は、建築上が設計図書に使用する材本の樹種と等級・断面=太さを書き込みますから、その設計図書を材本店に渡せば、設計図書どおりの木材を使った場合の見積書が作成できるということになります。ただし、最近の住宅の建築士のほとんどが、木材の中身を書きません。まったく工事業者にお任せといったところです。だから、施主が「トコ柱がこれじゃ、少し貧弱です」などと言うと、別途工事として材木店から請求されることになってしまうのです。あなたはスーツをオーダーするときに、生地を決めないで依頼しますか? 洋服屋さんの自由に任せるようなことは、普通は考えられません。住宅もまったく同じはずなのです。建築士は発注者と相談の上で、図のような「木材調書」というものを一軒一軒の住宅について作成するものなのです。また、それを作成してもらわないと、正しい工事見積書ができたことにはなりません。この木材調書さえ提出してもらえば、後日、木材に関して問題が起こっても、それを解決するのに時間も費用も多くはかかりません。木材調書のない木造住宅の請負契約は、生地を決めないでスーツを注文するようなものだということを知っておきましよう。

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